「どうも時計がおかしいわい。止まりそうに針が動きよる。充電しても直ぐにきれるの〜。」
じいちゃん、毎日一歩も外に出ず、コタツでテレビを観ている。だけど、腕時計にこだわりがある。部屋に大きな掛け時計もある。テレビにも時間表示がある。しかし、腕時計を見る。
その腕時計、 ヨメがインドネシアに行く前にプレゼントした物。もっと良いものを買おうと言ったが、じいちゃん、「これでええ。」
「のお、はあワシも寿命じゃけん、時計も直さんでええかの〜と思うちょったが、新しいのを買おうかの〜。」
じいちゃん、在宅酸素治療で酸素を吸い始めて、医者から「これで長生きできますよ。」って言われ、時計の買い替えを考えたよう。
時計の針が、カックンカックンとかろうじて動いている。じいちゃん、それと自分を重ねていたのかな。
時は刻む。何をしていても待ってはくれない。自分の中の時計が止まっている時だって、時は止まらない。
さあ、じいちゃん。
日曜日には時計を買いに行きましょう。
外に出る絶好の機会だしね。
人混みは避けてマスクはするんだよ。
じいちゃん、嬉しそうにほほえんだ。
この感傷的な場面で、ばあちゃんの一言。
「今のような安物じゃなくって、いいのを買わんとの〜。」
そうだねー。
今のは私は買ったんだけどね〜。
ばあちゃんの口、ホッチキスで止めちゃろうか!って時々思うヨメである・・・。