「今年は餅はつかん。」
と、ばあちゃんが言う。
我が家では毎年年末にお餅をついていた。近年では餅つき機にお世話になっているが、ほんの10年前までは「杵と臼」でついていた。どちらにしても重労働である。
今年は・・・。
ばあちゃんの発言を受けて、ヨメは素直にうなずいた。
「じゃあ、そうしよっか。」
ん?ん?ん?
ばあちゃんは、なんだか不服そうである。
なるほどね。
ばあちゃんは、『ヨメが餅をつく』と言えばつくつもり・・・って言うか、ホントはつきたいんだな。ヨメをジーッと見る。
ゲゲ〜!すごい圧・・・。
ま、負けないぞ!
餅をついても、我が家で餅を食べるのは、ばあちゃんとヨメだけである。最後にはカビが生えて捨てることしばしば。
ここら辺が潮時か・・・っと、ヨメは去年あたりから考えていたのだから。
「じゃあ、鏡餅を買おうかね。プラスチックで中にお餅が入ってるのでいいかね?」
「そりゃあ、さえんの。じいさんがなんと言うかの〜?」と、ばあちゃんはじいちゃんを見る。
じいちゃん、間髪入れず「それでええ。」
ばあちゃん、撃沈・・・。
かくして、ヨメは鏡餅を発注。
一件落着であるが、ヨメの心は揺れている。
この伝統をなくしていいのかな?
もう、そんな時代ではないことは分かっているのだが・・・。
振り返るとヨメの周りの景色は随分と変わってきている。それもものすごいスピードで。
餅つき、凧上げ🪁、羽子板、コマ回し・・。
カルタももはやトランプに、いや、ネットゲームに取って代わられている。STAY HOMEでボードゲームが一時復活したが、文明の機器にはかなわない。
寂しいような、楽チンなような・・・。
ふ、複雑である。
これも時代の流れか、と自分を納得させる。
懐かしき伝統を心に秘めて今年のお正月を迎えましょうか。